ガメラ対ゴジラ
林家しん平
ガメラ対ゴジラ8
中国山岳部に姿を潜めていたキャオスが暗闇の中その頭部を上げ中空を凝視していた、何かを探しているのではなく遠い日本で再び動き出した二頭の存在を察知したのだ。
その翼を大きくしならせ漆黒の夜に舞い上がった、周りにはギャオスを囲む軍隊も偵察ヘリの姿さえ見当たらなかった。
ギャオスによって軍隊のほとんどが行動不能にされていたのだ、グングンと上昇して行くギャオスは夜空の星と見分けがつかない位の大きさになりやがてその姿を消した。
翌日 午後5時
斉藤審議官が慌ただしく作戦本部のドアを開け放った。
「大変です、六本木爆心後のゴジラの背びれは形こそあれ・・・」
作戦指令管が続いた。
「形こそあれ、何なんですか」
「何と言ったらいいか・・・まるで抜け殻なんです」
「抜け殻 !?」
「そうです、中身が無い抜け殻です」
「どう言う事なんですか、それは」
「まるでトカゲが尻尾だけを残していったみたいな・・ゴジラ自体は下にはいませんでし た」
「では大戸島のゴジラが六本木のゴジラと同一の固体かもしれないという事か・・」
斉藤審議官は作戦本部のイスにもたれかかり。
「その可能性が大きいのです」
司令官が声を落とした。
「ゴジラは死んではいなかったのか・・・」
その時作戦本部室にけたたましいブザーが鳴り始めた。
「どうした!?」
通信士が振り向き。
「東京湾西部に向かう巨大生物が確認されています」
指令は声を荒げた。
「ゴジラか??」
「いえっ!!巨大生物はガメラと確認」
「ガメラだと!!」
「はい、ガメラが横浜に向かっています」
指令が立ち上がり。
「横浜全域に警戒を促し警戒態勢を指示し、急いで住民に避難勧告だ !! 早くしろ」
「はい !!」
「横浜にある総てのモニターを司令部に直結し情報を収拾、同時に攻撃へりに出動要請
戦車隊並びペトリオットを山下公園に配置し待機せよ」
夕方5時を過ぎた横浜は人でごったがえし非難は困難をきわめた、地元警察と陸上自衛隊の指揮の元人々は地下商店街へ避難し路上にはキーを付けたままの自動車が溢れていた。
その中を90式戦車がキャタピラをきしませ集結しつつあった、上空には攻撃ヘリがプロペラ音を響かせ飛びまわっている。
警察官と小競り合いをしている若者達が急に声を荒げた。
「ふざけんなよ !!! 横浜は俺たちが仕切ってるんだよ、マッポの手前が仕切ってんじゃ ねえよ !!! 怪獣が怖くて引っ込んでいられっかよ」
「貴様ら、この状態が分からんのか、外に居ては危険なんだぞ !! 地下に避難するん だ」
「うざってぇんだよ、さわんじゃねぇよ !!!」
若者の一人が警察官に食って掛かった、その時ビリビリと地鳴りがしてビルが振動した。
「地、地震だ」
若者はまだ薄ら笑いを浮かべている。
「びびってんじゃねぇよ、マッポのくせによーっ」
ドーンという下からの突き上げがあったと同時に回りのビルが音を立てて崩れだした。
「退避―っ!! 退避ーっ!!」
警官も若者も言い争っていた事を後悔した、瓦礫がバラバラと自身に降り落ちてきた。
「ギャ―ッ」と言う声が瓦礫に消えて行った。
地面が割れその中なあった配管が折れ曲がり水がもの凄い勢いで噴きあがッリ出し、
シューッというガス漏れ音がしたかと思うとあちこちで爆発し、人々の悲鳴が上がった。
巨大なビルが地鳴りと共に地面にめり込んで行くように沈みながらその姿を消していく、もうもうとした砂塵が辺りを覆い尽くし非難する人々をさえぎった。
瓦礫で埋め尽くされた中から起き上がってくる影が見えた、その影からバラバラとコンクリート片が雪崩れのように落ちてくる。
真っ黒な影が天に向かって咆哮した、聞き覚えのある雷のような鳴き声・・
頭上の影を見つめた人々が声を上げた。
「ガメラ・・ガメラだ・・」
震えながら後ずさりし瓦礫の中を逃げ惑った、ズシン・・ズシン・・地面が割れるのも構 わずにガメラが歩き出した、下からはガメラの表情は読み取れない。
その表情は何かを探しているように警戒し、口からは炎が吹き上がっている・・すぐにでも攻撃できる態勢だ。
警戒のサイレンと警察機動隊や自衛官達が慌てて誘導しているものの目の前の瓦礫に阻まれて、思うように誘導できない様子で人々のほとんどがその場にうずくまり動けずに居る。
ガメラは人間がそこに居ても眼に映っていなかった、そこに居るガメラは人間を守る事よりも地球の意思・・すなわち生態系を脅かす存在を滅する為だけに現れたのだ。
しかし見かたを変えればガメラ自身が人間の生存を脅かす存在なのだ・・。
無線という無線がガメラ現出を伝え、ガメラ現出による死傷者が多大である事も伝えていた。
司令部は緊急会議と共にガメラ攻撃命令を発動し迎撃態勢を整え、住民の非難が済みしだいガメラ攻撃に移る作戦を立てた。
ガメラは石川町から山下公園付近に迫っていた、山下公園が避難場所に選ばれていた事もあって公園から非難する住民が混乱をおこし誘導は手間取っていた。
パニック状態にある中に上空から光が突き刺さった、身体を押しつぶす光と音は爆音に変わり辺りを焦土と化した。
二回、三回と光が突き刺さり一万人以上の人たちがその場から消え去った。
ガメラは光の飛んでくる方向にブラズマを打ち込むが当たった様子は無く遥遠くで爆発音が聞こえてきた、プラズマ炎の航跡を縫うようにガメラに迫ってくる銀の矢が眼前で雄雄しい翼を広げた。
「ギャオスだ !!! }
「ギャオスが中国から戻ってきたぞ !!! 」
「退避ーっ !!! 全員退避ーっ !!!」
泣き叫んでいるような退避勧告が続くがほとんどの人達は傷つき死傷していた、ギャオスはガメラの頭上を旋回し再び戦える事を喜んでいるようにも見える。
ギャオスはガメラの頭上からグングンと上昇しゆっくりとガメラの方向に向き直ると翼を小刻みに振動させ目の玉をぐるりと反転し遮光版のように形を変えた。
ガメラはギャオスの翼が振動を始めた時点でその姿を瓦礫の中に隠した、遠くの方向からジェット機の轟音が聞こえその中に発射音が連続で轟いた。
ギャオスは振動する翼を翻しジェット機とミサイルの方角に向きなおも翼を振動しつづけた・・ギャオスの翼がパーッとし白く発光し針のように光の束がジェット機の方角に打ち込まれた。
白い雲の中からFー15の5機編隊が放射状に旋回したが、その中の2機が光の針・・
重音波ニードルの直撃を受けオレンジの光を描きこなごなに砕け散った。
隊長機から各戦闘機に指令が飛んだ。
「いいか、俺と山崎はギャオスの左右翼からサイドにそれたのち後頭部に攻撃を加える、佐藤と真壁は正面より翼に集中攻撃をたのむ・・失敗したら何度でも繰り返すぞ !!! 」
「ラジャー !!! 」
勇ましい掛け声とともにFー15がギャオスに向かって襲い掛かった。
ギャオスはじっとF-15を見つめままだったが背後でミサイルの発射音を感じ首を下げると反転し翼先端の鋭い爪でミサイルを切るように弾き返した、ギャオスは各方向から発射されたミサイルを自身で誘導するように飛び地面に向かって降下しぎりぎりでスライドしミサイルを自爆に誘った。
そして次々に狙いをつけF-15を叩き落して行った、最後のF-15が撃ち落され爆発をした炎の中からフラズマ火炎が業火を上げギャオスに命中した。
とっさに翼で自身をかばったギャオスだが翼の下部分がわずかに消し飛んでいる、突然瓦礫が吹き飛びガメラが姿を現し両手を飛行形態に変化させ飛び上がった、咆哮をあげ鋭い形相のガメラがギャオスに向かって来る。
ギャオスもその迫力に押され右に旋回したがガメラはそれを察していたかのごとく後に続く背後にガメラの気配を感じギャオスは背筋が凍りつく恐怖を感じた。
以前のガメラでは無い「何か」がギャオスに恐怖を覚えさせたのだ、ガメラの右手が変化した瞬間ギャオスの翼を掴んでいた。
もの凄い握力で翼を握りつぶそうとしている、振り払うにも握力が強すぎる・・。
ギャオスは自身の翼ごとガメラの手もろとも重音波をあびせた、一瞬はやくガメラが手を放したためギャオスの上腕部の翼が消し飛んだ。
「ギャオォォ‐‐‐‐ーッ !!!」
ギャオスの悲鳴が横浜の空に轟いた、傷ついたギャオスは狂ったようにガメラを追いまわすがガメラはその隙をうかがっていた。
翼の傷が思いのほか重いギャオスは格段に動きがにぶっており何かギクシャクしている・・・そこに隙が生まれた、あれだけ用心深かったギャオスの唯一の隙だつた。
これを逃すガメラではなかった、エルボーソードがギュンと音をたてた。
まるで日本刀のようにしなやかに空を切った、ギャオスは目の前に光の筋が走ったが気にも止めては居なかった・・が・・ギャオスの無傷の翼が血しぶきと共に身体からズレ落ちている。
ギャオスは何が起きたのか分からないで居たが、確実に形勢不利とみるや大空に飛び上がろうとしたが・・重症を負った片翼では到底無理な事であった。
何とか態勢を立て直そうともがくギャオスにエルボーソードが下からギャオスの顎めがけて振り上がってくる、避けたつもりが肩口に熱い物が切抜けて行くのを感じ次の攻撃を避け様にも身体のバランスを保つのに精一杯で反対の方角から首の下を鎌のような光が抜けて行き音を立てて何かがギャオスの足元に落ちて行くのを感じた。
なんだろう・・自分の身体が仁王立ちしているのが見て取れた、その身体には首から上が付いていないのだ。
意識が遠ざかっていく・・・最後に目に映ったのはガメラのプラズマによって砕け飛ぶ自分の身体だった・・ギャオスはそこで負けを悟った・・。
メリメリと頭蓋骨が割れる音が頭の中を駆け回る・・・グジャ !!! という音と共にギャオスは絶命した。
ガメラはギャオスを倒しても安堵してはいなかった、次に倒すべき相手はゴジラなのだガメラは一瞬にして手足を引っ込めもの凄い勢いでジエットを噴射して舞い上がった、残された現場はギャオスの無残な姿が、荒涼とした寒々しいビル郡はまるでギャオスの墓標のように聳えていた。
次の回へ